1.SaaS企業が知っておくべき、「なくならない理由」と現実的な向き合い方
経済産業省では、サプライチェーン全体のセキュリティ対策を可視化するための「SCS評価制度(サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度)」の整備が進められています。こうした制度整備が進むなかで、「認証や評価制度が広がれば、セキュリティチェックシート対応も減るのではないか」という期待の声をお客様からお伺いします。
しかし、結論から言えば、評価制度が導入されても、セキュリティチェックシート対応はなくなりません。
減らせる部分はあっても、なくなることはありません
本記事では、なぜチェックシート対応が残り続けるのか、その構造を整理した上で、SaaS企業がどう向き合うべきかを考えます。
2.なぜ、評価制度を取ってもチェックシートはなくならないのか
理由はシンプルで、評価制度とチェックシートは、そもそも役割が違うからです。
認証や評価制度は、組織として一定のセキュリティ統制を整備し、継続的に運用していることを示すものです。
一方、セキュリティチェックシートは、そのサービスが自社の利用条件に適合するかを、個別に確認するための手段です。
たとえば、「ログ管理の仕組みがあるか」という観点は認証や評価制度の中で確認されます。
しかし実務では、そこからさらに、
- ログの保存期間は何か月か
- どんな種別のログを保管・管理しているか(通信・アクセス・操作など)
- ログへのアクセスを制限しているか。アクセス管理はどのような方法を取っているか
- ログの監視実施状況と、インシデント時の報告フローはどうなっているか
といった、自社の利用要件に引きつけた確認が入ります。
つまり、評価制度は共通項を示すものですが、チェックシートは差分を埋めるためのものです。
この差がある以上、評価制度だけで個別確認が完全になくなることはありません。
3.チェックシートは「情報収集」ではなく「証跡作り」でもある
もう一つ重要なのは、チェックシートが単なる質問票ではないという点です。
発注企業にとって重要なのは、「相手が情報を公開しているか」だけではありません。
自社として確認し、判断したことを残せるかが重要です。
これは内部統制や監査対応の観点からも無視できません。
公開されたセキュリティポリシーや評価制度資料があったとしても、それだけで確認行為そのものが不要になるわけではなく、実際には「自社として何を確認したか」を残す運用が求められます。
そのため、チェックシートはしばしば非効率に見えても、発注側にとっては必要なプロセスとして残り続けます。
「埋まること自体が目的化している」ように見える場面があるのも、この構造によるものです。
4.標準化が進んでも、個別要件は消えない
制度やガイドラインの整備が進むこと自体は、間違いなく前進です。
共通化できる観点が増えれば、発注側・受注側の双方にとって無駄は減ります。
ただし、どこまでいっても企業ごとの差分は残ります。
発注企業業界ごとの規制、取り扱う情報の性質、導入部門の業務特性、求める可用性水準、海外拠点の有無。
同じSaaSであっても、顧客によって重視するポイントは変わります。
だからこそ、標準化が進むほど、逆に最後に残るのは個別要件への対応力です。
共通部分が整理されたあとに問われるのは、「その会社に合わせて、正確に、速く、説明できるかどうか」です。
5.では、SaaS企業は何をすべきか
セキュリティチェックシート対応は、なくす対象ではありません。
前提として、回るように設計すべき業務です。
実務で本当に負荷になるのは、ゼロから回答を書くことそのものよりも、
- 過去回答が見つからない
- 質問の意図が読み取りづらい
- 誰に確認すべきかわからない
- 表現の粒度が担当者ごとにばらつく
- 回答品質に不安があり、何度も差し戻しが起きる
といった、周辺のオペレーションです。
つまり、課題は「質問票があること」ではなく、回答ナレッジが構造化されていないこと、そして振り分けと再利用の仕組みが整っていないことにあります。 重要なのは、個別対応をなくすことではありません。
個別対応が残る前提で、どこまで負荷をコントロールできるかです。
6.Securateが向き合っているのは、この「なくならない業務」です
チェックシート対応は、認証や評価制度取得で置き換わる仕事ではありません。
だからこそ必要なのは、「なくなること」を期待することではなく、残り続ける仕事を、いかに効率化し、高品質に運用するかという視点です。
Securateは、この考え方に基づきサービスを提供しております。
過去回答の再利用、質問意図を踏まえた回答導出、適切な担当振り分け、そして専門家レビュー。
こうした仕組みによって、個別対応を残しながらも、現場の負荷と品質のばらつきを抑えていくことで、現実的な運用に対応しています。
7.まとめ
認証や評価制度は重要です。共通部分の説明コストは大幅に減ることが期待されます。
しかし、セキュリティチェックシート対応がなくなるわけではありません。
評価制度は、信頼の土台を示すものに対し、チェックシートは、個別の利用条件に照らして確認し、判断し、その証跡を残すもの。
それぞれ役割が異なる以上、これからも併存していきます。
加えて、セキュリティチェックシート対応は営業活動やカスタマーサクセスの一環であり、受注を左右する重要な業務として、効率化しつつ、顧客の信頼を得る機会ととらえる必要があると考えます。